おまかせ、信心

古本竜太

 

「信心」は浄土に生まれる正しい因であり、「称名(南無阿弥陀仏を称えること)」は阿弥陀如来の恩に報い感謝する、ということを「信心正因、称名報恩」と言います。

他の浄土教の宗派では、念仏をとなえることや、善行をすることが、浄土に生まれる因だとするところもあります。けれども、私たち浄土真宗本願寺派では、浄土に生まれ、仏となる原因は「信心」だとするところが教えの特徴になっています。信心は「おまかせ 」することだと説明されることがあります。 

「おまかせ 」と聞くと、日本食の言葉を思い起こされる方が多いのではないでしょうか?お寿司屋さんや高級な和食レストランに行くと、この「おまかせ」という言葉を目にすることがあります。自分で食べるものを決めずに、シェフに決めてもらうことで、たいていの場合、その日に仕入れたフレッシュな食材などを使って、美味しい料理を出してくれます。料理のことをよく知らないお客さんには、シェフがお客さんを見て、その人に合った料理を用意してくれることもあります。 

今年の夏に日本を訪れたとき、「おまかせ」がベストだと思ったことがありました。京都の清水寺近くに小学校を改装した高級なホテルがあり、そのホテルに義兄が勤めているご縁で、そのホテルのバーに行きました。そこでは有名なバーテンダーの方がカクテルを作っておられました。 

私は普段カクテルを飲みませんし、私は飲み物をすぐ飲んでしまい、もったいないので、高いものはあまり飲まないようにしています。なので、いざそういった高級なバーに行くと、何を注文すればいいのかわかりません。けれども、義兄が「何でもいいから何か注文したらいいよ。」というので、バーテンダーさんに 「おまかせでお願いします 」と言いました。 

でも注文してから、「今日暑いからフローズンマルガリータを注文すればよかったかな」と思いましたが、いらないことを言わずに、バーテンダーさんに「おまかせ」することにしました。何を作ってくださるのかとカウンター越しに見ていると、桃を冷蔵庫から取り出し、小さなナイフで桃を何ピースかに切ってミキサーに入れ、氷やお酒などを入れて、ピーチのスムージーのような飲み物を作られました。そしてそのスムージーの上にミントの葉を小さく切ったものを添えて、私に出してくれたのです。 

そのももカクテルは、本当においしくて、爽やかな味でした。蒸し暑い夜でしたが、涼しい気分にさせてくれ、やっぱり「おまかせ」は間違いないと思いました。特に、何を飲んでいいのか、何を食べたらいいのかわからないときは、よく知っている人におまかせするのがベストです。 

お浄土に生まれ、仏となることに関してベストな方法は、阿弥陀さまへおまかせすることです。我々は、浄土に生まれるにはどうしたらいいかわかりませんが、阿弥陀さまは全てわかっておられ、我々の往生のために必要なことをご用意してくださっています。往生して成仏するには仏さまにただおまかせする「信心」が正しい原因なのです。智慧の浅い者が往生のためになると思ってすることは正しい因にはなりにくく、正しい結果も招かないのです。 

親鸞聖人は「正信偈」の中で、「信心」と「念仏」の関係について説かれています。 

弥陀仏の本願を憶念すれば 自然に即のとき必定に入る。ただよく常に如来の号(みな)を称して、大悲弘誓の恩を報ずべしといへり。 

(現代語訳、阿弥陀仏の本願を信じれば、 おのずからただちに正定聚に入る。ただ常に阿弥陀仏の名号を称え、 本願の大いなる慈悲の願に報いるがよい」 と述べられた。)

 ここでは、阿弥陀さまのすべての衆生を救う、という本願におまかせすれば、浄土に生まれることが決定し、おまかせしている人の念仏は、阿弥陀さまのご恩に報い、感謝する意味を持つ、と言われています。 

信心正因、称名報恩ということを心に入れて、お念仏し、日々を送っていきましょう。 

南無阿弥陀仏