龍と浄土真宗
仏暦、2567年(2568年)
西暦、2024年
令和六年
辰年
あけましておめでとうございます。
新しい年が皆様にとって楽しく、有意義な一年になるとよいですね。今年は辰年です。日本では、干支の年に生まれた人を年男(としおとこ)、年女(としおんな)と呼びます。2024年に12歳、24歳、36歳、48歳、60歳、72歳、84歳、96歳、108歳になる人が、その年の年男、年女ということになります。
12年というのは、人生のサイクルが変わる時期だと考えられていて、その年が 縁起の良い年だという説もあれば、縁起の悪い年だという説もあります。けれども、浄土真宗では占いや迷信に頼らず、ただ阿弥陀如来におまかせして、仏様の智慧をいただき、良いことも悪いことも受け入れられるようになるという考えなので、毎日が良い日であり、毎年が良い年であるとします。
私たちの人生は、毎日が浄土への一歩であり、仏に成るための人生だとして、どんな出来事も仏になるために意味のある出来事だと味わうのです。
ですから、浄土真宗の念仏者は、神仏に幸運が恵まれるようにと、祈ることはしないし、悪いことが起こらないようにと、心配しすぎなくてもいいようになっています。けれども、親鸞聖人は他の神さまや仏さまを否定することなく、むしろ神仏は念仏者を守ってくださっていると感謝しておられます。
親鸞聖人は、「現世利益和讃」の中で、天神地祇と呼ばれる天地の神々がお念仏をとなえる人々をお守りしてくださると述べられていますし、「南無阿弥陀仏をとなえれば 、昼も夜も龍が守ってくださる 」とも述べておられます。東洋では龍は水の神で、人間に恩恵を与えてくださる存在だとされ、仏教では龍は仏法の守護神となっています。
龍は寺院を守るシンボルとして崇められることがあるので、多くの仏教寺院で龍の絵や像などを見ることができます。
いくつかの禅寺の天井には龍の絵が描かれています。その理由のひとつは、火事を起こさないようにするためだそうです。天井の龍の絵は雨を連想させます。雨は火を消すので、龍の絵を見ると、僧侶は火やガスを消すことを思い出し、火事にならないように注意を払うことになります。
洗心寺には、2匹の龍の像が香炉の両側に取り付けてあります。それは、世の無常を知ること、そして念仏をとなえることを勧めている、といただくことができます。
左側(向かって右側)の龍は口を開けていて、右側(向かって左側)の龍は口を閉じています。口を開けている龍は、誕生の最初の泣き声を象徴していて、口を閉じた龍は命の終わりを象徴しています。
この2匹の龍は生と死を表現していて、仏教では、生死(しょうじ)という言葉は迷いや妄想を意味します。私たちは、すべてが永久に続くものだと錯覚していて、その錯覚によって苦しみが生じる、と説かれています。
2匹の龍の間には香を燃やす炉があります。本来、お焼香は仏陀に敬意を示すことを意味しますが、この意味に加えて、お香の煙を無常の象徴と見ます。生まれてから死ぬまで、すべては無常であり、すべては変化していく、ということを表現しています。
無常の世界を生きるためには、頼りになるものが必要で、私たちにとって、それは阿弥陀仏や念仏となります。
それで、香炉の龍は無常の人生を知らせると同時に、日々の中で念仏をとなえることも勧めています。私たちがお寺で教えを聞くとき、龍が雨を降らせていると考えることができます。この雨は仏法の雨です。法の雨に濡れると仏法の風邪をひきます。仏法の風邪をひいたら、咳をするように自然にお念仏が出てくるようになる、ということです。そう考えると、香炉の左右の龍がなまんだぶ、と交互にとなえ、私たちに一緒に念仏をとなえましょう、と促しているようにも見えてきますね。
今年もお寺にお参りして聴聞し、お念仏とともに有意義な一年を過ごしましょう。
南無阿弥陀仏